学童保育に木の芽どきがやって来た

小学3年生の女児で猫の
鳴き声がとても上手な子どもがいる。

自分でも鳴き真似には
自信を持っているから、
猫の真似を始めると勢い
がついてエスカレートする。

画用紙などに猫の耳を描き、
それを切り取って鉢巻き式に
頭に取り付けると、裸足になって
鳴き真似をしながら這い回るのだ。

その鳴き方にも
種類があって、鳴き声だけ
だと本物と区別がつかない程である。

そのうち、教室の中では
物足りなくなったのであろう、裸足の
まま外に出て這い回って又戻ってくる。

躾けがつかない
本物の猫と全く同じなのだ。

それを見ていた小学1年生の
女児たちが同様の真似をはじめて、
猫の親子が出現しやかましく鳴き騒いでいる。

これも、木の芽どき
の春が来たからなのか。

ある日、廊下で競馬が始まった。

四つ足になった児童の
背中に騎乗して、それぞれ
の騎馬が先行を競う遊びである。

2頭の出走馬が
スタートからゴールまで、
背中に乗った騎手がジャンケン
をして勝った方が前に進むのだ。

グーはグリコ
チョキはチョコレート
パーはパイナップル
で、該当する数だけ進む
のであるが、少しでも多く前に
行こうとするから、右手と右足
を同時に動かして歩幅を稼ごうとする。

当然のことながら乗り心地
は極めて荒いものとなる。

従って落馬も起こるのだ。

それを見ていた他の
子どもが俺も私もと、4組の
騎馬となって2倍の賑やかさになった。

この際なので私も
一枚加わって、出走直前の
ファンファ-レから始めて、
競走中の実況放送やゴール到着時
の喚声まで協力してみたところ、子ども達に
大受けとなって一大イベントの開催となった。

見物するのも出走馬
たちも熱狂的な状態である。

およそ30分位の間
競馬で遊んで、午後3時になった
ところで遊び時間の終了を告げた。

すると、あれ程熱狂的な喚声
を挙げていた子ども達が、ピタッと
静かになって指示通りに従ってくれる。

気障きざな言い方をすれば、
これが子どもとの信頼関係なのだ。

ただし油断は禁物、
おやつの時間が終われば再び次の遊びが、
或はまた騒がしいことが始まるのだ。

子どもは疲れることを
知らず遠慮することも知らない。

従って油断していると
事故や事件発生につながる。

譬えの言葉は悪いが、放牧状態のなか
での監視と指導が大切で、集団生活を
するための守るべき節度が必要となる。

それを遊びの中で学ばせる
支援が学童保育であるが、
なにぶんにも、小学1年生から
6年生までの異年齢の集団である
から、どこに基準を置くかが難しい。

自然発生的に
低学年・中学年・高学年
かたまりになることもあるが、現実
には複雑な現象の方が多いのである。

換言すれば、学童保育は
子ども達にとって、大人社会の
疑似体験のできる場と言えるであろう。

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