「忌」(いみ)という語は神聖と不浄、相対的な二つの用途を持っている。

禁忌きんきを破る、の「禁忌」

日常生活における「禁忌」(きんき)という風俗・習慣の概念は、一般に

  • 人や事象に対してけがれた状態
  • 神聖なものとして、これに接近したり交わったり使用すること

これらを禁止する慣行儀礼である。 つまり、日本の社会に於いて古くから伝承されて来た、道徳的かつ感情的な社会通念というものである。

いみの二つの用途

禁忌という語には、特に禁制の意味が強く表面に現れている為に、消極的で強制的な心理にさせられるが、 一般的には禁の字を外して「忌」(イミ又はキ)が使われている。 そして、「忌み」という語は相対的な二つの用途を持っている。

一方では、祭祀さいしに用いられる「忌鋤」(いみすき)「忌鍬」(いみくわ)のように、極端に神聖かつ清浄なものがあり、また他方では、死亡や葬儀など穢れとして極力避けようとするものがある。 この対極的な「忌」に対して、共通した「物忌み」という語が存在する。

神聖な「物忌み」

神聖な「物忌み」は、「忌籠り」と言われるように祭礼に備えて禊(みそぎ)をしたり、籠り屋に於いて物忌み精進をする。殊に、食べ物には忌火を以って調理をし、使用している食材にも禁制があり、更には女性との接触には厳しい禁制がある。

不浄に対する「物忌み」

他方、不浄に対する「物忌み」は、その中心となるのは人の生命に関するもので、近親者の死亡により忌中として喪に服す。一般社会に対しても、職場に「忌引き」の届出をして家に引きこもるのである。

種々の「物忌み」や「忌み言葉」

そして、この禁忌の概念が他のものへも種々発展して、漁業・狩猟・鍛冶その他の特殊職業者が、仕事を始める前に或はその途中に、種々の守るべき「物忌み」があり、漁民の沖言葉・猟師の山言葉など「忌み言葉」も発達している。 一般に使用している「忌み言葉」には、死に関するものが多く「無くなる」とか「旅立つ」というのも、不吉を連想させる忌み言葉である。

拡大解釈が行き過ぎた「忌み言葉」

現代に於いては、不幸を連想させる言葉として、葬儀に参列してくれた人に対する御礼の言葉に、「お忙しい中を」とか「ご多忙中」という言葉はNGだと言う。 それは、「忙」の字の中に「亡」が含まれているからとの拡大解釈であるが、そうなると、「忘れ形見」という言葉さえ使えなくなって終うので、拡大解釈も行き過ぎた感があり、最早、風俗・習慣の域を逸脱したもののように思われる。