私が釣を始めたのは、小学生の頃に小川で鮒を釣ったのが最初で、その頃は釣れるのを待っているのが耐え難くて、膝近くまで川に入って手網で魚を追い回していた。 その次が河口でのハゼ釣りだった。そしてチヌ(黒鯛)釣りへと進展し、中学生の頃には体力が付いて、夏休みには海の素潜りで、種々の魚をヤス銃を使って捕っていた。この頃には、美味しい魚ばかりを狙って捕ることを覚えた。
今では時代も変わり海の様子も激変して、昔の面影を望むこともできないが、その代わり釣り道具は格段に進歩している。言うなれば進歩し過ぎる程の進歩で、道具だけでなく撒き餌や誘魚剤まで進化している。それと共に、魚の方も賢くなって簡単には釣れなくなった。驚くべきは釣り餌が高額になったことだ。牛肉のA5ランクよりも高額な餌となり、その餌を使っても釣れない程に魚も贅沢になっている。
かつて、渓流釣りに足繫く通っていた頃に、毎年夏から初秋にかけて職場での仲間たち4~5人で、キャンプをしながら渓流釣りをした。この時、初心者級でもヤマメが2~3匹は釣れていたのに、どうしても1匹も釣れない者がいた。不思議に思って私の竿をそのまま持たせてみたところ、たちまち立派なヤマメが釣れたのだった。
それで判明した事は、その者はヤマメ釣りの餌に、スーパーで売っている安価なイクラを買って来ていた。それはイクラではなくて巧妙に作られた疑似イクラだった。人間は騙されても魚の方は騙されなかったのだ。
私にもこれと良く似た経験がある。若き頃に購入したスーツが中年太りで着られなくなったので、洋服ダンスに長年にわたり眠ったままにしていた。ところが、私自身に起こった健康上の思いがけぬアクシデントによって、10キログラム以上瘦せることになった。 不幸中の幸いとも言えるが、この為に長年眠っていたスーツが、再び着られるようになったのであるが、10着中半分位が虫に喰われて小さい穴がいっぱい空いていた。喰われずに助かったのは、価格が安めの交織物や化繊物で、純毛(ウール)素材の物は全滅だった。
虫は騙されなかったのだ。
天空の城ユドウフ