飴1個、思いがけぬ楽しみ

こんばんは、湯豆腐です。

子どもにとって、思いがけぬ楽しみ更に期待する楽しみが、密かに存在していることを知って、我ながらほくそ笑んでしまったお話です。

学童保育に来ている子どもで、学習時間を早く終えることができた女の子が、私のところに寄って来て「わたし、ひま」と言いながら、私の机の上を置いてある書類も持ち上げてあちこち何かを探している。 ペンケースの中まで、重ねてある書類の一枚一枚の間まで丹念に探している。そして、「ないなぁ」「ないなぁ」と再度同じ所を繰り返して探している。 不思議に思って「何を探しているの?」と訊いてみると、「この前、飴をひとつ見つけたの」と言う。それなら、私にも心当たりがあるのだ。

私は5年前、胃癌で胃の三分の二を切除しているので、その後遺症で時々ダンピング症状が起こるのだ。 ダンピング症状というのは、胃を切除した人特有の症状で、残存する胃が極端に少ない為に、十二指腸や小腸に繋がる胎内の様子に、異変が生じるもので突然の発熱・発汗・気分が急変悪化する症状で、暫くの間動けなくなってしまうのだ。 しかし、これには前兆があるので発症を防ぐ為に、血糖値の調整をすれば効果が望めるのだ。 私の場合は、空腹を感じ始める頃に異変が生じるので低血糖発症型なのだ。この為、血糖値を上げてやる為に飴を常備しているのだ。 その飴を口に入れようと思ったところに、電話がかかって来たり誰かが用事を持ち込んで来て、一時的に机の上に置いた飴を置き忘れたのであろう。

女の子にしてみれば、それを見つけた時の喜びは一入で、二度目もあるだろうと探しているのだ。 最初は一人の女の子だったのに、その様子につられて二人三人と寄って来て、派手に机の上を探し回すのだ。 そのうち最初の女の子が「おかしいなぁ、なんで無いのかなぁ」と呟いた。 と言う事は、飴を見つけたのは一度ではないのだ!。たぶん二度は経験しているから「おかしいなぁ」となるので、三度目もあるはずだと確信に近いのだろう。

そこで、もうひとつ訊いてみた。「君たちは、先生が怖くないの?先生は時々、悪いことをした子どもを叱りつけるだろ、怖いと思わないの?」。 すると女の子は「ぜ~んぜん、怖くないよ」「私たち悪いことしてないから」と言う。 そして更に「悪いことしている人は、怖いと思うよ」そう言って、チラッと該当する男の子の方を見て小さく指差すのだ。

折角だから、飴を2~3個出してやろうかと思ったが、その気持ちを抑制するのに苦労を感じた。 そして、昔のことを懐かしく思い起こした。我が子が小学生だった頃に、車の掃除をする前に、車内に百円玉を2~3個撒いてから、車内掃除を手伝わせていたことを。 大人は狡いのだ、それでも子どもは思いがけない喜びを楽しんでいる。